口腔ケアを通じた認知症のスクリーニングで注意すべき症状
- 最近些細なことで怒りっぽくなる。
- 同じことを何度も聞きなおす。
- 同じ話を何度もする。
- 物の名前が思い出せない。
- 物忘れが激しい。
- 時間の感覚がない。
- 場所の認知ができない。
- 病院からもらった薬の管理ができない。
- 自分が行っていた口腔ケアができなくなる。
- 以前あった事項に関心や楽しみが失われる。
- ドアや水道の蛇口、電気のスイッチなどの締め忘れ消し忘れが多くなる。
- お金を盗られたなどの妄想がある。
- 算数の計算ができない。
- 時計による図示と簡単な図のスケッチができない。
- テレビなどのストーリーの理解ができない。
高齢者では正常な老化による緩やかな物忘れなどを検証する必要があります。これらの症状が認められても安易に断定せず尊厳をもって対応し、必要に応じて家族や専門医に相談してください。
口腔ケアを行ううえで理解しておくべきこと
認知症の方には口腔ケアも大事な治療のひとつといえます。口腔ケアを行ううえで以下のことに留意してください。
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① 味覚などの感覚も異常なことがある。
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② 今までできていたことができなくても無理やりさせない。
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③ 自尊心を傷付けないように配慮する。
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④ 病態を理解して個人で可能な口腔ケアプランを作り、あまり無理なプランを押し付けない。
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⑤ 口腔ケアを自分でやってできた方は必ず褒める。
適切な口腔ケアによっては、認知症の進行を遅らせることができます。一方、口腔ケアを行っても感謝の気持ちを持ってもらえない、暴言を吐かれる、体を触られるなど大変なこともありますが、認知症という病気について十分理解し、認知症の方が口腔ケアの施術時になぜそのような対応や行動をするのかを分析して冷静に対応することが重要です。
口腔ケアと性的な問題
口腔ケアの施術をしていて、体を触られたなど性的な問題があり、相談を受けることがあります。認知症だからといって性的欲求が少ないわけではありません。しかし認知症の方は性的欲求をどのように満たしてよいのかすらわからず、このような行為になってしまうことがあります。
口腔ケアをしていて認知症のため財布や通帳を盗ったのではないかと疑われた場合
自分が疑われても、まずは穏やかに接してください。もちろん強い口調で怒ったりしてはいけません。相手の気持ちを落ち着かせ、一緒に探してあげましょう。そしてその中で関心をそらしていき口腔ケアに戻っていきます。毎回起こるようであれば、代替品などを用意しておき、これを渡して納得させましょう。また本人自身が隠してしまっているような場合、家族にどこに隠しているのか聞いておくのものもよいでしょう。
口腔ケアを実施中に起こる性的な問題
認知症だからといって性的な問題がないわけではありません。性的欲求があり、むしろその自制や満たし方がわからず問題行動になってしまいます。
「卑猥な発言をする」この場合こちらが嫌がるとむしろ面白がってもっといってきます。さりげなく受け止め別の話題に変えましょう。また胸や腰を触ってくるのも同様です。重症の場合性的行為を迫ってくることもあります。このときも慌てずに対応してください。次回からはこちらの衣服に工夫をすると共に、口腔ケアを行う場所なども考慮しましょう。
また必要に応じて複数のスタッフと協力して口腔ケアを行うとよいでしょう。これができない場合家人に同席してもらいましょう。性器を見せたがる場合は、その原因についても考慮してください。性器の汚れによるかゆみや、湿疹などがある場合があります。